一話完結の短編小説です。
幼虫
「この幼虫が綺麗なアゲハになったら、お姉さんの病気も治るよ」 小学校の授業で使うためアゲハの幼虫を探す私と、アゲハの幼虫が沢山いる木が庭にある住宅街のお姉さん よく晴れた午後だった。太陽が私の真上にあるもんだから、おばあちゃんに言われた帽...
子猫
小学生の夏、子猫を拾った思い出。仄暗い話です。 猫の平均体温は三十八度から三十九度。最近猫を飼い始めた苑田が得意げに話しているのを聞き流しながらぼくは、窓の外に浮かんでいる入道雲を眺めていた。ぼくが話を聞き流していることに気が付いたのか、...
ヘヴンアリウム
反道徳的な表現を含みます。小説内のどの行為も推奨していません。 泣き腫らした目と、赤く色づいた頬が印象的な少年だった。健康的な肌に一瞬似合うように見えるその赤は、反対に心の不健康を表したもので、僕の呼吸を一瞬止めるのには十分な色だった。レ...